【再掲】日産 A680X / Nissan A680X
2007年2月26日にアップした表題のエントリーが、検索してもGoogleに全くヒットしないので内容を加筆修正したうえで再掲します。
このクルマは日産が第3回日本グランプリ用の秘密兵器として開発したレーシングプロトタイプ。タイトルに「日産 A680X」と書いているが、これはこのクルマの正式な名称ではなくて某旧車専門誌が便宜上付けた"仮称"。
車体は、フェアレディとは若干構造の異なるラダーフレーム + 総FRP製のボディという構成で、セドリックに搭載されたL20型をDOHC化したエンジン(開発コード B680X :アルミ合金製ヘッド、燃焼室:半球形、バルブ配置:V型のクロスフロー、潤滑系:ドライサンプ、点火系:ツインスパーク(プラグ)、WEBERのサイドドラフトキャブ×3基)が搭載された。
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A680X(仮称)のエンジンベイ
B680Xの設計は日産の戸田凱夫(よしお)氏が担当。L20型をDOHC化したのは難波靖治氏(後にNISMO初代社長に就任)から「高回転化には6気筒が最適」との進言があったからとのこと。B680Xをベンチで回したところギアトレーン部分が壊れてしまったため、カムシャフトはチェーン駆動に変更された由。クランクシャフトは鋳造や鍛造ではなく、ムク棒からの削り出しで製作。ドライサンプ化するたのスカベンジポンプが逆回転の設計になってしまったため、ギア駆動だったものをチェーン駆動に変更して対処した、というエピソードもあるとのこと。最高出力は190ps/7600rpm、最大トルクは19.5kg-m/6400rpm。B680Xは10数基作られている。4バルブでシングルプラグ仕様のエンジンはB681Xと呼ばれたそうだ。
そもそもB680Xはセドリックのハイパフォーマンス・バージョンを作ることを意図して開発されたが、サスペンションを大幅に改造しないと車体に載らないことが判明したため、商品化は見送られることになってしまった。
B680XはL型系のエンジンではないと考えている向きもあるようだが、設計者である戸田氏が「商品化を念頭に置いていたためL20型をベースにしてDOHC化した」と仰っているので、本ブログでは設計者の意思を尊重して「B680XはL20型をDOHC化したエンジン」と主張させて頂きます。
閑話休題。
このレーシングプロトタイプのプロジェクトリーダーを務めたのは、当時 新卒研修を終えたばかり(入社2年目)だった新人エンジニアの野口隆彌氏。およそのレイアウトやシャシー構造は、真木伸氏らのシャシー開発グループと共同でまとめられ、スタイリングは初代シルビア(CSP311)や Nissan 2000GT(開発コード A550X)を手掛けた木村一男氏にアドバイスを受けながら野口氏が図面を引き、回流水槽を使った実験で少しずつ形を追い込んでいって決定された。
完成したA680Xは富士スピードウェイに持ち込まれてテストされ、北野 元氏のドライブで2分8秒(6kmのフルコース)の記録を叩き出した。参考までに、ライバルと目されたトヨタ2000GTのタイムは2分10秒、プリンスR380のタイムは2分5秒だったそうだ。
しかし折り悪く、第3回日本GPの直前に日産とプリンスの合併話がまとまってしまい、「合併する2社のプロトタイプ(A680XとR380)が同じレースで競うのは大人気ない」との理由で、A680Xのグランプリ出走は見送られてしまう。
北野氏は最後まで「このマシン(A680X)で走らせてくれ…」と食いついたそうだが、彼の願いが叶えられることはついぞなかった。
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