埼玉製作所でのT360の塗装工程
埼玉製作所大和工場では、以下のような工程でT360の塗装を行っていました。
T360の塗装作業を行ったのは、二輪車塗装ラインの方達だったそうです。
塗装ラインのチーフは梅沢正一氏、生産技術を担当したのは瓦田陽一氏でした。
・前処理の詳細は不明 (浜松で生産されたASの前処理は日本ペイントのAPCプロセス)
↓
・下塗りプライマーを手吹きでスプレー塗装後焼付け
↓
・空研ぎとシーリング作業
↓
・アルキドメラミン樹脂系上塗り塗料をスプレー塗装
↓
・床下とフェンダー内側にアンダーコートを塗布後常温乾燥
↓
・ボンネットHマークをマスキング後、白ラッカー塗料で塗装 ※1964年12月10日生産分から
↓
・塗装外観検査
↓
・車組ラインへ払い出し
T360のキャビンは内製でしたが、セットバック(荷箱)は八千代工業新座工場で、ボンネットは鈴鹿製作所で製造されました。
(クリックで拡大表示)
画像出典:フライング特集号(資料協力 BOND様) ※画像は何れも埼玉製作所で撮影されたものです
T360の塗装ラインの写真は持っていないので、代わりに埼玉製作所の社内報に掲載された小物パーツの塗装工程改善に関する記事を貼っておきます。
(クリックで拡大表示)
出典:やまと弘報 231号年末号
雑誌のライターさんは、簡単に"市場で競合する他車に合わせて価格を下げた"なんていうことを書きますが、こういった生産現場の方達や生産技術者、開発技術者の創意工夫、奮闘努力によってコストダウンを実現してはじめて販売価格を下げられるのですよね。
上掲の記事のような"つくり手の努力"を一切考慮せず、たんなる憶測で知ったようなことを書かれると、私なんかは悲しい気持ちになってしまいます。
クルマは工場から勝手に生み出されるのではなくて、1台1台人の手で作られるんだということを忘れないで欲しいですね。
| 固定リンク
「Honda T360 T500」カテゴリの記事
- 特定産業振興臨時措置法案(特振法)の功罪 プリンス スカイライン編(2025.12.28)
- ホンダエスのプラグカバーと部品供給に関する私の"ざれごと"あるいは"たわごと"(2025.08.28)
- 6月5日はT360の展示と試走が行われた日(2021.06.05)
- 狭山製作所におけるAK250・AK280の塗装工程(2021.04.11)
- T360が現役だった頃の高画質映像(2020.05.12)



コメント
日々考え抜いてコストダウンを実現して行く、当時は人の手が入る所が多かったので大変だったのですね。
当時の技術者の方々の努力には頭が下がります。
投稿: スポーツ800 | 2020年3月16日 (月) 午前 08時39分
>スポーツ800さん
コメントありがとうございます。
T360のデビュー時の販売価格は34万9千円でしたが、後に新価格として5万円値下げして29万9千円で販売しました。一気に15%の値下げです。
現代の感覚だと5万円は大した金額ではないですが、半世紀前の5万円は大きな金額でした。大卒初任給が2万3千円程度でしたから2か月分強です。
これだけの値下げを実現するために、研究所でも生産工場でも日々アイデアをひねり出し、試行錯誤を繰り返したのですが、そういう部分はなかなか旧車専門誌にも取り上げられないので、殆ど知られることなく歴史に埋没しています。
設計変更の変遷を追うのもいいですが、個人的にはこういった"つくり手"の苦闘の足跡をもっと取り上げて、後世に伝えて欲しいと思います。
投稿: mizma_g@管理人 | 2020年3月16日 (月) 午後 11時37分