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2021年11月20日 (土)

ホンダSシリーズの異端児、S5・600(えすごろっぴゃく)の生産台数と販売台数に関する一考察

ホンダSシリーズといえば、S500に始まりS600、S600クーペ、S800、S800クーペとバリエーションが増えていきましたが、これらの他にS500と同じ外観を持つS600が存在したことをご存じの方も多いと思います。
このS500と同じ外観を持つS600、通称S5・600(えすごろっぴゃく)が何台生産・販売されたかについて、このエントリーでは深堀してみようと思います。

さて、S5・600(えすごろっぴゃく)の生産・販売台数ですが、これはきちんとした資料がある訳ではないので、状況証拠からの推測になってしまうことを予めお断りしておきます。
それではまず、S600が発売されるまでの経緯をまとめると以下のようになります。

1964年(昭和39年)
2月   浜松製作所で量産試作開始
2月26日 荒川テストコースでプレス向け発表会と試乗を実施
3月1日  S600発売
4月 埼玉製作所でS600用エンジンの生産開始
5月 市場向け車両の生産とデリバリーを開始

この時期のS600の生産台数は、どこのご家庭にもある「S600 5桁フレーム号機車台番号一覧」によりますと↓
211120_s600_5 (クリックで拡大表示)
出典:ホンダ公式サイトのコンテンツ "ホンダ バーチャルピット" ※現在は閉鎖されて閲覧不可

以下のようになります。

1964年(昭和39年)
2月 10001~10068 68台
3月 10069~10103 35台
4月 10104     1台
5月 10105~10355 251台
(以下、省略)


ここでパーツリストを確認すると、フロントグリル(ラジエターグリル)がS600用の格子タイプに変更されたのは「AS285-10105」からとなっています。
211120_s600grille (クリックで拡大表示)
旧品番AS2858201AはAS2858201Bに統一されていますから、これらは多少の相違点はあれども、取り付けに関しては互換性があった。つまり、「AS285-10105」から格子グリルが適用されたと解釈して間違いないでしょう。
念のため、フロントバンパーを確認してみますと、やはりS600の格子グリル用段付きバンパーに変更されたのは、「AS285-10105」からとなっています。
211120_s600bumper (クリックで拡大表示)
ということは、「S600 5桁フレーム号機車台番号一覧」に記載されている通り、1964年(昭和39年)5月から生産が始まった市場向けの車両から格子グリルに変更されたということになります。
つまり、S500と同じ外観を持つS5・600(えすごろっぴゃく)の生産台数は1964年(昭和39年)2月から4月までに生産された104台となる訳です。

一つ例を挙げると、ヨーロッパから里帰りを果たした「AS285-10081」号車の外観は"まんまS500"であり、「AS285-10001~10104」がS5・600(えすごろっぴゃく)であったことを示唆しています。
211120_as28510081 (クリックで拡大表示)
211120_as28510081plate (クリックで拡大表示)

ここで皆さんが疑問に思うのは、パーツリストに「AS285-10001~10104」の記載がないことだと思いますが、これの理由は簡単で「市販せず市場に流通しなかった車両はパーツリストに記載する必要がなかった」ということです。
前出の「S600 5桁フレーム号機車台番号一覧」に記載されていることと、パーツリストの記述が見事に一致していることから、私のこの推理はかなりの確率で正しいと自負しておりますが、考え方は人それぞれですから情報の取捨選択は各人の責任で行って頂ければと思います。

ということで以上をまとめると、S5・600(えすごろっぴゃく)の生産台数は104台、販売台数(正規のルートで新車として販売された台数)は0台。
これが私の見解になります。
しかしながら、一方でS5・600(えすごろっぴゃく)が数は少ないながら現存している事実がある訳で、じゃあそれらはどこから流出したんだということになりますが、流出ルートの一つに関してはすでに掴んでおり、いずれ何らかの形で公表できるかと思います。
乞うご期待。

最後に豆知識を。
S500とS5・600(えすごろっぴゃく/ S600)を識別するポイントは、フロントグリルに「Honda S600」のエンブレムがあるかないかです。
211120_s600s500 (クリックで拡大表示)
〇左の車両がS5・600(えすごろっぴゃく/ S600)、右の車両がS500です。
但し、前出の10081号車のように技術研究所がワークスカーとして仕立てたレース用車両には、「Honda S600」のエンブレムは付きませんでしたのでご注意下さい。
211120_gp-japan1964_16 (クリックで拡大表示)
※第2回日本グランプリに出場したゼッケン16番"島崎貞夫"車と上の「AS285-10081」号車は同一の車両です。

 

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コメント

S600の最初に500と同じ外観のが104台も有り、市販はされなかったとは。100台以上作ればどれか流出はしますよね。
S360も何処かに生き残ってないですかね。

投稿: スポーツ800 | 2021年11月21日 (日) 午前 08時28分

>スポーツ800さん
コメントありがとうございます。
量産試作車を100台以上も作るのは、当時としては多かったんじゃないかと思います。
沢山作られた量産試作車は、主にホンダの関連会社などで使われたようで(例えば鈴鹿サーキットのレンタカーや日本GPのワークスカー)、用済みになったものが一部市場に流出したようです。
S360は全く情報がないですね。ホンダが復刻車を作ってしまったので、世間の関心が薄れてしまったような気がしますが、個人的にはどこかに残っていて欲しいといまだに思い続けています。
ひょっこりと姿を現してくれるといいのですが。。。

投稿: mizma_z | 2021年11月22日 (月) 午前 05時35分

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