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2020年3月 3日 (火)

【Old-timer】公開校閲その4【171号】

33頁上段左端に市販された'63年超初期モデルとして、フロントグリルが分割タイプのT360が挙げられていますが、31頁上段中央の写真を見ればわかるように、'63年3月の時点で既に分割メッキグリル(1Xおよび2XAKに採用)は廃され、ワンピース塗装仕上げのグリルに設計変更されていました。
したがって、'63年6月以降、埼玉製作所で生産された量産試作車や量産車に分割グリルが採用されたとは考えにくく、当該記述は誤りである可能性が高いです。

参考までに、'62年製と'63年製のT360の画像を古い順に以下に貼っていきますので、ディテールの変化をご確認下さい。

'62年型 2X-AK250 (第9回全日本自動車ショー出展車)
200303_2xak (クリックで拡大表示)
試作型(試作用の金型)で製作されたルーフは、プレスラインが5本である点に注目して下さい。また、フロントフェンダー上部に水平のプレスラインがありません。
ボンネットは樹脂製で、ヘッドライトのメッキリムが付いていません。また、フェンダーミラーは運転席側のみです。
グリルは分割タイプ。2Xにはツインラジエター、ツインファンという凝った冷却系が採用されていたので、グリルを分割にしたのはそれと何か関係があるのかもしれません。
ただ、エンジンをミッドシップマウントしているT360のラジエターは、グリルからだいぶ離れた位置に取付けられていましたけどね。

上掲の車両の色違い。製造時期は不明。(ショー出展車よりは後だと思います)
ディテールはほぼショー出展車と共通のようですが、ボンネットのエンブレムが青地の"ウイングマークと"赤地の"Honda T360"の組み合わせに変更されています。
200303_ak2grille (クリックで拡大表示)
1Xと2Xは給油口に蓋が付くのが特長です。
200303_ak2grille_2 (クリックで拡大表示)
このメッキの分割グリル、見た目は良いのですが、プレス端面から赤錆が発生する問題がありました。
そこで、防錆力の向上を目的に素材を高輝アルミニウム材に変更する研究がされましたが、結局それは採用されませんでした。
おそらくコストの問題があったためと思われます。

これは寒冷地テストに供された車両です。この写真が撮影されたのは1963年3月。
助手席側のフェンダーミラーがないこととフロンバンパーの意匠が2Xと共通していますが、グリルが横桟が2本のワンピース塗装仕上げのものに変更されています。
200304_ak_6303test  (クリックで拡大表示)
残念ながら見えている部分が少ないので断定的なことは言えませんが、あるいは2Xのグリル部分を交換しただけの車両なのかもしれません。
車両の全体が写った写真はないのでしょうかね。

これは寒冷地テスト車よりも後に作られたと思われる車両です。
製造は、'63年初頭から埼玉製作所で量産試作が始まる同年6月までの間のいつかだと思いますが、資料不足で正確な製造時期を特定することはできません。
200303_3xak_01 (クリックで拡大表示)
ご覧のようにルーフのプレスラインは5本、フェンダー上部はツルテンで2Xと共通ですが、給油口の蓋がなくなりメッキ仕上げ(?)のフィラーキャップが露になっています。
また、ボンネットエンブレムは赤地に"HONDA"のシンプルなものになり、グリルは横桟が2本のワンピース塗装仕上げのタイプです。
よく見るとバンパーの意匠が変更されています。また、このタイプからフェンダーミラーが左右に付くようになります。
メーター部分の白いカバー風のものは何なんでしょうかね?
ラジエターの数とグリルの分割に相関があったとすれば、このタイプからコンベンショナルなシングルラジエター、シングルファンになったのかもしれません。
エクステリアだけでなく、メカニカルな部分でも大幅な設変が実施されたとすれば、このタイプから3Xになったと推察されます。

有名な宣伝カーは、上掲の3Xと思われる車両と同じ仕様ですが、ボンネットエンブレムが市販車と同じデザインに変更されているように見えます。
200303_3xak_prcar1 200303_3xak_prcar2(クリックで拡大表示)


同じ宣伝カーでもルーフのカラーリングが違うこの車両は、ルーフのプレスラインが6本の量産型(量産用の金型)で製造されており、埼玉製作所で生産された量産試作車だと分かります。(写真の撮影場所は大和工場の敷地内でしょうか?)
200303_dankaku2 (クリックで拡大表示)
200303_dankaku1 (クリックで拡大表示)
ただし、フェンダー上部はまだツルテンで試作用の金型が使われていることから、段取り確認(量産工場で行われる最初の試作イベント)で製造された段取り確認車(段確車)と推察されます。
33頁下段の本文中に段階確認車という記述がありますが、段階確認という試作イベントはありません。

これはボンネットが樹脂製だと分かるショット。
200303_dankaku3 (クリックで拡大表示)
ボンネットステーで固定されていない運転席側が垂れているのがよく分かります。

このカラーリングの宣伝カーは、1963年6月16日にホンダが「ホンダ四輪車生産開始!!」の発表と「スポーツ500価格クイズ」の告知をした際、PRのため市中を走り回りました。
T360が発売される以前にナンバーを取得していた車両が存在したのは、複数の量産試作車がこのような目的で使用されたためです。当然ながら、他の理由でナンバーを取得したものもあったでしょう。
200303_dankaku4 (クリックで拡大表示)
200303_dankaku5 (クリックで拡大表示)

 

これは'63年型量産車の生産風景です。ボンネットはまだ樹脂製。
200303_productionmodel 200304_productionmodel_20200304151201 (クリックで拡大表示)
ルーフは当然ながらブレスラインが6本で、フェンダー上部にブレスラインが入っています。フェンダー上部のプレスラインは品質確認車(品確車)から入れられるようになったのでしょう。
品質確認以降は全て量産用の金型が使われるのが通例です。品質確認のあとには量産確認が行われ、最終的に量産開始となります。
ご覧のように、車体色がネオサンタンの車両には、白系/赤系のツートンカラーのシートが装着されました。

最後はボンネットが鋼板製に変更された車両。鋼板製のボンネットから、メッキのヘッドライトリムが付くようになります。
200303_productionmodel64 (クリックで拡大表示)
ボンネットの設変は、車台番号の進み具合から'63年11月初旬ころに実施されたと考えられるので、この車両は'64年型ですが'63年に生産された可能性があります。
因みに、'64年型に切り替わったのは1963年9月21日からです。
'63年型のT360が何台販売されたのかは知りませんが、'64年型に切り替わる前に500台強のT360が生産されています。(日本小型自動車工業会調べ)

 

 

 

 

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コメント

軽トラックとは言え4輪車を作るホンダの意気込みと迷いが分かりますね。量産に至るまで数々の手直しが有ったのですね。
開発から試作までは社内秘も多く謎も膨らみますが、そこがまた歴史を生むのでしょうか。

投稿: スポーツ800 | 2020年3月 4日 (水) 午前 08時45分

>スポーツ800さん
コメントありがとうございます。
T360はホンダが初めて世に放つ四輪車だったので、本田社長はホンダらしさ(=高性能・デラックス)を求めましたが、開発責任者の中村良夫さんは市場で競合するライバル車より少し性能が良いくらいにして価格を抑えること望みました。
この2人のキーマンの狭間で落とし所を見つけ続けた結果、T360は設計変更が繰り返されました。
「凝ったメカニズムを採用したため不具合が多く発生したから」というのは、設計変更の理由のひとつでしかないのですが、この点を誤解されているのが残念なところです。
自動車開発は一般には明かされない秘密が多く、外部の人間にとっては謎だらけですよね。その謎を解いていくと、埋もれた歴史が発掘される。そんな感じだと思います。
自動車考古学という言葉がありますが、私のような旧車の歴史派マニアがやっていることが、まさにこの自動車考古学なんだと思います。

投稿: mizma_g@管理人 | 2020年3月 4日 (水) 午後 10時03分

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