« 【ホンダ】発売日のソース 第二弾【T360】 | トップページ | 『細谷四方洋 回想録 #1』 »

2013年7月10日 (水)

【日産】生産展開とは【用語解説】

当ブログに田村久米雄氏(以下、田村さんと表記)が寄稿して下さったエントリーの中には、生産展開という言葉がよく出てきます。
この生産展開という言葉の意味は、部外者である我々にはなかなか分りにくいものですので、田村さんに解説をして頂きました。
少しばかり順番があべこべになってしまいましたが、用語について知識があることは、決して無駄にはなりませんので、是非ご一読頂ければと思います。


****************************************************************************

CA案が役員承認を得た後、直ちに線図化作業に入り、プラットフォームの形状をモデラー3人(S30を担当したのはモデリングを担当していた阿部君、漆原君、鈴木君)に実作業をしてもらい、私が監修しながら進めます。
その間、担当デザイナーはEXT.Design(エクステリア・デザイン)のフィッティングパーツのデザインをリファインしながら設計に引き渡せる図面にして行きます。
この作業が生産展開です。
 
通常のセダンで有れば、ラジエーターグリル、テールランプなどが重要なデザイン上の要素になるのでこれらのデザイン作業を先行しますが、S30の場合、スポーツカーなのでバンパー、オーバーライダー、ラジエーターグリル、テールランプ、ホイール、またはホイールカバー、ランプハウス、ウインドーモールディングの図面化を進めます。
デザイン処理上の難点があると作業が滞ってしまうので、重要度の順に3~
4点を同時並行で進めていました。
バンパー、オーバーライダーの図面化を終了した頃に、スタジオチーフからレース仕様にラジアルタイヤを履かせるので、オーバーフェンダー、リアスポイラーのデザインをせよと命じられて、フルサイズクレイでこれらのモデリングをしました。
フロントのスポイラーについてはまだ私の中でベストの解決手法が決まっていなかったので後回しにしていました。
 
 

その頃、プラットフォームの線図が完成し、線図のコピーとモデルの写真を日産車体に届けて、デザイン上のポイントを彼らに説明してくるようチーフから命じられ、1週間、日産車体に出向しました。
この時、私は既に生産展開作業に入っていたので、プロジェクトを監理していたチーフが行くべきだと思っていました。
戻って来ると、「デザインデータの自動化システムを設計で進めているが、このシステムのオペレーションの窓口となる仕様にするために、造形課からIBMの講習を受けてシステムのサポートをする人材が必要だが前任者2人が不合格だったので、君が受講してくれ」と課長補佐に命じられたのです。
それから1ヶ月半に亘ってIBMの講習会を受講しました。
そして3回の講習会に合格すると「技術電算課から私を1年間出向させてくれと要望されているので出向してくれ」と云われ、そのまま出向しました。
横バーグリルの図面化の完成がまだ未完成でしたが、これ以降、約1年間技術電算課で仕事をしましたので、S30の生産展開についてはこの先どうなったのか全く知りませんでした。
この数年の聞き込みで唯一、テールランプはD案を担当していた西川君が図面化した事、ドアハンドルのえぐり部分はモデラーの阿部君が線図化を担当した事が判明しただけで、それ以外は誰が何を図面化したのかは不明です。
ランプハウスやモールディングなどは日産車体の設計陣が進めたと思われます。  


尚、図面化を進めるに当たっては、JIS規格に準じた自動車製造に関わる独自の規格(Nissan Engineering Standard)に基ずいて図面を描きます。
バンパー/ラジエーターグリルなど左右対称部品も多く、これらは右側のみを図面化し、「左右対称部品」と表記します。
また、テールランプ/フェンダーミラー/サイドマーカーなどは右側部品のみを図面化し、左側部品は「勝手違イ」と表記します。
量産品は内製(社内製造)か外注かは政策的な判断で決定されますが、試作についてはデザイン部署がその製品化が得意と思われる企業を指名して進められます。
通常、スタジオチーフは過去に幾つものプロジェクトを経験していますから、どのメーカーの誰に相談すれば良いのかを知っています。
プラットフォームのデザインを担当したデザイナーは通常、3〜4人のアシスタントデザイナーを割り当てられ、誰にグリル、誰にバンパー、誰にテールランプと担当を分け、アシスタントのアイディアも加えて、デザインを監理します。
パーツの担当デザイナーは図面が出来上がるとチーフからコンタクト先を聞いて業者(ペーペーのデザイナーに先方の部長や課長クラスがやってきます)と打ち合わせをします。
業者が図面に従って試作品(バンパー、ホイールカバーなどは木型、グリルなどのモールド品は金属試作品、中にはダイカストを削り出したブロック、ランプ類はアクリル加工品)を持って来ます。(自分のデザインで図面化した部品が形となって出来上がって来るのはワクワク物です)
細部の変更、表面処理の変更、塗装仕上げの変更など、何度かの図面修正を経て、最終試作品でデザイン部署の承認を受けて、図面を設計部署に渡します。
ここから各設計部署によって生産設計が始まります。
本来なら担当デザイナーの元に複数のアシスタントデザイナーが配置され、生産展開が始まるのですが、第4スタジオは私以外にはD案を担当していた西川君、桑原君しかいない上、線図化作業に入ってからの約2ヶ月、私は1週間置きの出向が続き、線図化要素の強いバンパー、オーバーライダーなどの図面化を進めていました。(その2ヶ月間、西川君や桑原君がどんな作業をしていたのか全く知りません)
テールランプやフロントスポイラーなどは全く手を付けられる状態ではなく、バンパー、オーバーライダーも図面化が完成には至っていませんでした。そんな状態でスタジオを離れる事になったので、断腸の思いでした。(自分が生んだ赤子の授乳の時期に無理やり引き離されたような心境でした)





|

« 【ホンダ】発売日のソース 第二弾【T360】 | トップページ | 『細谷四方洋 回想録 #1』 »

Nissan Fairlady Z(S30)秘められた真相」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/158972/52396160

この記事へのトラックバック一覧です: 【日産】生産展開とは【用語解説】:

« 【ホンダ】発売日のソース 第二弾【T360】 | トップページ | 『細谷四方洋 回想録 #1』 »