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2010年6月18日 (金)

Nissan2000GT(A550X)は何台作られたのか?

日産2000GTの製作台数については、実は二つの説があります。
一つはNostalgic Hero誌が主張している3台説。 
そしてもう一つは、トヨタ2000GTの写真集を出版された吉川 信氏が主張されている2台説です。
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Nostalgic Hero誌も吉川氏も、日産2000GTの開発に関わった方達に直接を取材をされているので、記事の内容の信憑性は高いと思いますが、それでは何故製作台数について齟齬が生じるのか…その理由は私には分かりません。

しかしながら、当ブログでは日産2000GT(A550X)の製作台数については、一貫して3台と表記してきました。
どうして3台としたかというと、公開されている数少ない日産2000GTの写真を見る限りでは、ディテールの違いから3つのタイプの日産2000GTが確認できるからです。
そこで、このエントリーではその3つのタイプの日産2000GTについて解説しつつ、日産2000GTの製作台数について考えてみようと思います。
 
さて、それでは本題に入る前に、まずは予備知識として日産2000GTのクレイモデルと思われる車輌の特徴を頭に入れておきましょう。
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この車輌がクレイモデルかどうかは、はっきりとは分かりませんが、ボディ表面のマットな質感や、如何にもソリッドモデル的な黒塗りされた前後左右のウインドウから、私はこれをクレイモデルだと判断しました。
画像の右奥に写っている扉の付いた四角い箱は、クレイを加熱して柔らかくする機械ではないでしょうか。
もしそうならば、この機械の大きさとの比較から、クレイモデルは1/1スケールと推測できると思います。
但し、ヤマハ側の開発メンバーとして日産2000GTの開発に参加した花川 均氏は、Nostalgic Hero Vol,33で「(日産2000GTは)クレイモデルは作らないで、そのまま形にしていったと思います。」と証言されています。
“思います”とのことですから、100%クレイモデルを作らなかったと仰っている訳ではありませんが、氏の記憶ではそういうことのようです。
画像の車輌がクレイモデルであるか否かについては、読者の皆さんの判断にお任せするとして、このエントリーでは便宜的にクレイモデルとして話を進めます。
 
クレイモデルはデザイン画や線図などから最初に起こされた立体のモデルですから、その形はデザイナーが発想したものに最も近いと言えるでしょう。
そして、そのようなプリミティブな姿を持ったクレイモデルに一番よく似た試作車が、初期の日産2000GTだと言えると思います。
 
クレイモデルの外観の特徴的な部分は以下の4点です。
1.リアクォーターウインドウが変形の四角形である。
2.ホワイトリボンタイヤが使用されている。
3.ショルダーラインがドアの後部で大きくキックアップしている。
4.足の長いフェンダーミラーと思われる部品が装着されている。
 

 
以上の点を踏まえて、まず1台目の日産2000GTを見てみましょう。
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                    (Click image for full size)
上掲の2枚の画像は、夫々別々のサイトから拝借したのですが、右の画像はどちらのサイト(ブログだったかも?)にアップされていたものだったか、URLをメモしたファイルを失くしてしまったので分からなくなってしまいました。
画像の無断使用が不味かったら直ぐに削除しますので、もしサイトの管理人さんがこのエントリーをご覧になっていましたら、コメント欄からお知らせ下さい。
左の画像は、Gumbyさんという方のフォトアルバムからお借りしたのですが、フォトアルバムのサービスが終了してしまったらしく、Gumbyさんと連絡がとれません…。

http://www.google.com/search?num=50&hl=ja&lr=lang_ja&safe=off&tbs=lr%3Alang_1ja&q=gumby+%E5%88%9D%E4%BB%A3Z%E3%81%AE%E5%88%9D%E6%9C%9F%E3%81%AE%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%A2%E3%83%87%E3%83%AB&aq=f&aqi=&aql=&oq=&gs_rfai=
こちらも、画像の無断使用が不味かったら直ぐに削除しますので、Gumbyさんがもしこのエントリーをご覧になっていましたら、コメント欄からお知らせ下さい。

 
ここではこの車輌を便宜的にType-Aと呼ぶことにします。
Type-Aの外観の特徴は以下の通りです。
1.リアクォーターウインドウが変形の四角形である。
2.ホワイトリボンタイヤが装着されている。
3.ショルダーラインは、クレイモデルよりも頂点が若干後方に移動していて、幾分なだらかな曲線になっている。
4.フェンダーミラーの取り付け位置がクレイモデルよりも後方に移動していて、ミラー自体も足の短い砲弾型のものに変更されている。
5.ノーズに円形のオーナメントがない。
6.ルームミラーがない。
7.ドアアウターハンドルの形状が板状で、キーホールが別に付く。
(Datsun Coupe1500からの流用か?)
 
1.2.の特徴はクレイモデルと一致しており、3.4.は相違していますね。
3と4はおそらく実車化する段階で変更されたのだと思います。
5~7については、後述するType-B/Cと比較する際に説明します。
 
日産2000GTは3つのタイプが確認できると上に書きましたが、その中でリアクォーターウインドウがクレイモデルと同様に変形の四角形なのはこのType-Aのみです。
そのため、私はこのType-Aが日産2000GTの初号機なのではないかと考えています。
それと、某サイトに“日産2000GTのフロントフェンダーには、トヨタ2000GTと同じ形状の整備パネルがある”と書かれていますが、ご覧のように日産2000GTにそのようなものはありません。
 
今度はType-Bを見てみましょう。
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Type-Bの外観の特徴は、以下の通りです。
1.リアクォーターウインドウが、若干変形した二等辺三角形である。
2.ホワイトリボンがないタイヤが装着されている。
3.ショルダーラインは、Type-Aと同様。
4.フェンダーミラーが無い。
5.ノーズに円形のオーナメントが無い。
6.ルームミラーが装着されている。
(Datsun Coupe1500からの流用か?)
7.ドアアウターハンドルの形状が細長く、キーホールが一体になっていると思われる。

 
このType-Bではリアクォーターウインドウの形状が変更されており、変形の四角形から、角を一つ減らした三角形となっています。
ショルダーラインはType-Aと同じだと思います。
ショルダーラインのクレイモデルとの違いについては、以下の画像を参照下さい。
100618_clay_hikaku (Click image for full size)
こうして並べて見ると、ショルダーラインのキックアップの仕方が違うのがお分かり頂けると思います。
それと余談になりますが、前後フェンダーのホイールアーチの形状も、クレイモデルとType-Bではちょっと違います。
ルームミラーは上にも書いたように、Datsun Coupe1500から流用したのかもしれません。
参考までに、Datsun Coupe1500のルームミラーは↓このような形状でした。
100618_csp311_mf6511 (Click image for full size)
 
タイヤはバイアスからラジアルに変更されたのでしょうか? Type-Bではホワイトリボンがなくなりました。
また、ドアのアウターハンドルの形状がType-AとType-Bでは異なり、側面図を見る限りではType-Bのドアハンドルとキーホールは一体になっていたようです。
また、Type-AとType-Bのボディカラーは、タイヤの黒との明度差から判断するに、かなり近い色に見えます。
前出の花川氏の証言に拠れば、日産2000GT(A550X)のボディカラーは真紅だったそうなので、もしかしたらType-AもType-Bも真紅に塗られていたのかもしれません。
 
最後はType-Cです。
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                    (Click image for full size)
Type-Cの外観の特徴は、以下の通り。
1.リアクォーターウインドウが、若干変形した二等辺三角形である。
2.ホワイトリボンのないタイヤが装着されている。
3.ショルダーラインは、Type-AやBと同様。
4.フェンダーミラーが無い。
5.ノーズに円形のオーナメントがある。
6.ルームミラーが装着されている。
7.ドアアウターハンドルの形状が細長く、キーホールが一体になっていると思われる。
8.フューエルフィラーキャップの形状がType-Bとは違う?
  

Type-Cは基本的にType-Bと同様の外観ですが、ノーズに円形のオーナメントが追加されている点がType-A/Bとは決定的に違います。
このオーナメントもDatsun Coupe1500からの流用でしょうかね。ご覧のように形状がよく似ています。
また、Type-CとType-Bではフューエルフィラーキャップの形状が違うように見えます。
因みに、Type-Cのステアリングを握っているのは、ヤマハの花川 均氏です。
左の画像を見ると、ドアアウターハンドルの形状がType-Aとは違うことがよくお分かり頂けるかと思います。
ドアハンドルの形状は、先端が細くなっているので涙滴型に近いようですね。
それと、Type-CとType-Bでは、フロントバンパー下のナンバープレート用ステーの形状が違うようです。
100618_typeb_stay (Click image for full size)
Type-Bのステーは長方形のワンピースもので幅が広く、Type-Cのステーは2ピース?で、Type-Bよりも少し幅が狭いようです。
上掲のType-Aの画像を見ると、Type-Aのステーも2ピースのように見えます。
 
フランスのトヨタ2000GTのサイト「www.2000gt.net」さんに拠ると、このType-Cはファイバーボディで、車体はく塗られていたそうです。
http://www.2000gt.net/Yamaha/Yamaha3.php
この情報の出典が不明なので鵜呑みには出来ませんが、ボディカラーについては、タイヤとの明度差がないくらい濃い色なので、黒というのは説得力があるように思います。
また、Type-Cのボディカラーは、Type-AやType-Bとは明らかに違う色であることが分かりますね。
しかしながら、ファイバー(FRP)ボディであるかどうかについては写真では判断がつきません。
個人的には、鋼鈑モノコックボディ(但し、一部にサブフレームを使用)だった日産2000GTを、FRPで製作することが本当にできたのかなぁと、ちょっと疑心を持っています。
フレーム車だったら話は別ですが、FRPのモノコックボディとなると、それ用に設計をし直さなければいけなかったでしょうし、細いAピラーをFRPで再現したら強度的にかなり心もとないような気がします。
まあ、ピラーは鉄筋でも挟んで積層すればよいのでしょうけれど…。
因みに、Nostalgic Hero Vol,33のP68には「ボディはFRP製といわれているが、実際に作られたのはスチールボディだ。外板は肉厚0.8~0.9mmだといわれている。 」との記述があります。


ということで、3つのタイプの日産2000GT(A550X)について、簡単にですが解説しました。
Nostalgic Hero誌が主張する3台説は、当時の写真を見るかぎりでは説得力があるようです。
ただ、3台が一同に会した写真がないので、例えば「Type-BはType-Aを改修した車輌ではないか」とか、「Type-Bのボディを塗り替えてディテールの一部を変更したのがType-Cなのでは?」などと邪推できてしまいます。
とはいっても、この邪推は妥当性を担保するものが何もない単なる推測・憶測ですから、信憑性はゼロですし、そのような邪推をすることに意味があるとは思えません。
Nostalgic Hero誌は開発者を取材して“日産2000GTは3台製作された”という情報を得たのでしょうし、実際に当時の写真から夫々ディテールが違う3種類の車輌が確認できるのですから、“日産2000GTは3台製作された”と解釈するのが自然でしょう。
また、日産2000GT(A550X)はタイトなスケジュールの中で開発されており、1号車が完成した時点で開発にストップが掛かったそうですから、完成した車輌をあとから弄り回したとは考えにくいと思います。
そのような訳で、当ブログでは日産2000GT(A550X)の製作台数を3台としました。

もちろん、これは確定した事実ではなく、あくまでも私見です。
2台説と3台説のどちらを信じるかは、読者の皆さんの判断にお任せします。

最後に、以前でっち上げたA550Xのカラー画像に手を加えて製作した、Type-BとType-Cのイメージ画像をアップしておきます。
100617_a550x_typeb06 100617_a550x_typec03
                     (Click image for full size)
おそらく日産2000GTの実車はこんな姿だったのではないかと思いますが、今考えるとターンシグナルランプのレンズはDatsun Coupe1500と同様に白だったかもしれません…。^^;

尚、赤丸の付いた画像は、すべてwww.2000gt.netさんからお借りしました。



    

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コメント

 初めまして。
調べものをしていて、貴殿の記事を見つけました。
貴重な資料が多く、凄いサイトだと驚きました。
今後も時々寄って、読みふけることにしました。

 当方、或る二輪メーカーでエンジン設計をしていた者です。
今は現役を離れ、工業系の専門学校で教員をしております。

 さて、記事の写真を見て思うのですが、
A550Xのtype-Aですが、試作車ではなく、モックアップではないかと考えます。つまり、張りぼての、外観スタイル検討用モデルです。

会社によっては、クレイモデルとモックアップを区別しないことがあり、名称が必ずしも統一されているものでもありません。
四輪の場合、クレイモデルは時間と工数の節約で、左1/2だけ作る場合があり、記事中の写真もそれに近い感があります。
(フェンダーミラーの長いステーは、半分の車体の裏側からのびているように見えます。)

しかし、モックアップモデルは原寸大で全体を作り、立体的な検討を行います。
当時の関係者が、試作車を2台とも3台とも記憶しているのは、モックアップを試作車に含むかどうかの、認識の違いだと思われます。

かつて籍を置いた二輪メーカーでは、いきなり原寸大のクレイモデルのモックアップ車を作ることが多かったものです。
二輪はエンジン部分が複雑で、クレイでは造形できないので、仕方がないことです。
四輪メーカーのデザイン検討は、二輪とは行程が異なるでしょうが、写真で見る限り、私には上記のように思えるのであります。

突然に邪推を書き込むこと、お許し下さい。

投稿: 鶴屋南木 | 2010年8月 8日 (日) 午後 12時16分

>鶴屋南木さん
初めまして、コメントありがとうございます。
なるほど、タイプAはモックアップモデルですか。
仰るように、そう考えると当時の関係者の製作台数に関する証言に齟齬が生じることに、合点がいきますね。
A550Xは自動車ショーに出展するため、かなり大急ぎで開発されたようですから、最初の1台は展示用の張りぼてだった可能性は充分ありますし、そう考えると尚おさまりがいいように思います。
もちろん確証があるわけではないですが、ひとつの考え方としては大いにありだと思います。
貴重なご意見、ありがとうございました。
また何か気が付いたことがありましたら、遠慮なくコメント頂ければと思います!
今後とも、よろしくお願いいたします。


投稿: mizma_g@管理人 | 2010年8月 9日 (月) 午前 06時15分

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