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2008年4月13日 (日)

「ホンダS360の輸出の件」と「T360の吸気システム」

○ホンダS360やT360/S500の試作車について研究・考察している「三妻自工 Web site」はこちらす。
○Web site that researches and considers the concept model of HONDA S360 and T360/S500 is here.


4月8日4月10日のエントリーで前フリをしました「ホンダS360の輸出の件」と「T360の吸気システム」ですが、この2つは、実は本田社長の発言をもとに書いたものでした。
以下に、そのソースとした本田社長の発言を「フライング 資材版 No.12」より引用して掲載しますので、まずは目を通してみて下さい。
尚、この本田社長の発言は、1962年に開催された第11回全国ホンダ会の総会においてなされたものです。
第11回全国ホンダ会では、“FRPボディのS360(TAS260) ”と“T360の最初のプロトタイプ(XAK250)”が初めてお披露目され、また本田社長自らの運転によりS360の試走が行なわれました。

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000400_12_01 (この画像はBOND様よりご提供頂きました)

〔まえがき〕
第11回全国ホンダ会総会は去る6月5日名古屋市愛知文化講堂で全国の会員700余名の参集をもって開催されました。
今回のホンダ会は単なる販売店の自主組織の定例行事にとどまらず、本年の日本産業界、就中自動車工業会に於いてエポックを画するものとして、大きな注目を集めるに至りました。
本年は本田技術研究所で開発中の四輪車を始め農機関係を含む多くの新製品展示と試走を建設中の鈴鹿サーキットで行なったあと、愛知文化講堂で総会が行なわれ、その席上本田社長、藤沢専務の挨拶が長時間にわたってなされ、わが社における今後の企業趨勢を大いに強調しておりますので、ここに要旨を伝え各メーカーさまがたの指針といたします。

000400_12_02 (この画像はBOND様よりご提供頂きました)
本田社長挨拶

(前略)
 それから四輪車でございますが、この四輪車もふつうのいままでのような四輪車だったらうちではもう三年も四年もまえに出しております。きょう私が走った最高スピードが百十キロでございます。あれは百二十キロまで出ます。馬力が三十五馬力くらい出ておりますから、おそらく世界でいちばん小さなエンジンで最高の馬力を得ていると、私は信じている次第でこざいます。あの向こうの側の山際をカーブを切って走ったときのスピードが、ちょうど八十キロくらいでございます。まだまだあれは七千回転くらいしか出ておりません。あのエンジンは九千ないし一万まで出すことができます。

080413_ (クリックで拡大表示)
手を振りながら鈴鹿サーキットのホームストレートを疾走する本田社長


ホンダの最高回転と耐久性
 よくホンダの車は回転が出るからすぐに減るんだろう、なんてばかなことをいってるやつもいるんです。これは、かってカブを出したときときに、ホンダのエンジンは回転が出る。あんな高馬力では女、子どもは乗れない。そしていちばん早く減ってしまう。だから寿命が短いんじゃないだろうか、ということを言われた方がいます。ところが、そのホンダの車が一番長持ちして、いちばん、セコの値段が高いですね。世の中というやつは、どうもずいぶん見当はずれたことを言うものです。

 私の知ってるある新聞記者が、去年の六月にある大会社の七百五十ccの車の発表会に行ったんです。そして、「七百五十ccで二十八馬力とはなんぞや、ホンダは二百五十ccで四十五馬力も出して、マン島で優勝しているじゃないか」と質問した。そうしたら「いや、ホンダみたいに回転出せばうちだって出る。しかしあれはレースだからいいけれども、とかく回転を上げるとすぐつぶれて減ってしまうから、うちはああいうことはやらないんだ」と答えたそうです。その新聞記者はなにも知らないで僕のところにきて、「実際そのとおりか」と言うから、私は「冗談言うな、七百五十ccが二気筒だって、一シリンダーが三百七十五ccになってると、ちょうどわれわれの倍だ、そうすると単気筒で両方考えた場合に、三百六十ccを単気筒、三百六十ccの四気筒と、こういたしますと、三百六十cc一気筒だと、トルクのカーブが非常に高くて、また下がる、どんこどんこと、石油のエンジンみたいにまわる。そのためいちばん高いところのトルクピークで、クランク・シャフトなりギアーなりメタル、いろんなものを設計しなけりゃならん。そうするとギアーが大きくなる。乗り心地が悪くなる。振動が多いから、どうしても防音装置が必要になる。鉄板も厚くなる。ボディーもガタガタするから、どうしてもいろいろな装置が要る。ところが四気筒になればまあストロークは四分の一にはならないけれども、まあ四分の一になったって、四倍の回転数を出したって、ピストンスピードは同じじゃないのか。けっきょくピストンスピードに対しては同じである。しかし、トルクのカーブが非常に小さな波になるから、ギアーがまあ四分の一にはならんけれども、とにかくギアーの強さもかなり減ってくる。クランク・シャフトだって細くできる。振動ももちろんない。ボディーも軽くできるんだ。それだけ回転を出したって、四倍の回転数出しても、同じことのピストンスピードになるんだ」と言ってやった。

 こんなことは、小学五、六年の算数だっていうんですね。それがわからなくて、自分たちが回転を出すことができないことを棚にあげて、そういう人の悪口を言ってるような会社というものはいい加減なものでね、これを信じている人もあるんだからね、まあわれわれのホンダ会の人たちは信じていないと思うけどね、よそでは信じているやつがいるんです。今度は、もう一万回転もエンジンが回るといったらそんなエンジンではすぐホンダの自動車はつぶれちゃうだなんて、そういう馬鹿野郎もいるんです。

ホンダ軽四輪トラックの魅力
 それから今度出すトラックのエンジンは運転台の床下についております。前から風をとり入れております。そうしてダイナモのケツにファンをつけまして、そうして遠心分離機をつけまして、空気とダストを分離して、それをまた濾紙で漉しまして、キャブレターへ入れております。これは現在特許出願中でございます。ですから、普通の自動車よりずっと新鮮な空気がはいることになっております。現在走っている、テスト中の車なんかも、ぜんぜん減りを認めることがないんです。非常にこの点もアンダー・フロアにつけてもご心配がないという立証を得ておりますので、ご安心を願いたいと思います。

 それからメタルは、バビット・メタルというふうなものは全々使っておりません。全部ニードルローラー・ベアリングを使っております。これは四気筒レーサーを、われわれは多年研究いたしましたその成果を、このクランク・シャフトに織り込んだのです。ですから冬の北海道あたりの、零下二十度、三十度のスタートにも非常に簡単にかかるようになっております。もちろん暖冷房装置は、トラックにもついておるわけでございます。そしてラジエターは二重になっておりまして、二つのファンによって、かた一方は冷えたときにすぐに温度が上がるように、そしてその温度差によってコントロールできる、それで大きなラジエターと共通になるようになっております。そして下のほうのラジエターのほうから直接ホットエアーを運転台へ入れるようにしてございます。

 またエンジンの回転数は違いますが、スポーツカーと同じエンジンで、共通部品で全部いけることになっております。トラックのほうが、これは下のほうのトルク・カーブを上げるために、かせいでおります。スポーツ・カーのほうは、高速をねらって作ってございます。スピードはさきほど言いましたように百二十キロは出ます。きょうご覧のように、八十五キロぐらいであのカーブを切っておりますけど、非常に安定したカーブ走行ができます。あのくらいのスピードで、いまの国産車を運転していけば、だいたいひっくり返り、まあ百キロ以上出せばハンドルがかなりぐらつくところでございます。まあ私の腕前がいいわけじゃございません。あれは車がいいんでございますから、その点おまちがいのないように。

080413_t360
  ホンダ会に出展されたT360(XAK250)/(この画像はBOND様よりご提供頂きました)

輸出のホープ軽四輪スポーツカー
 あのスポーツ・カーであれば、私は輸出ができるし、また必ず輸出してみせるという自信をもっております。よく、スポーツ・カーだったら、二人乗りだから売れないだろうというようなことを聞くんですが、私はそうは考えておりません。四シートだから売れるんだとか、二シートだから売れないんじゃないんです。シート数があって売れるんなら十人乗りぐらいのマイクロ・バスを買ったほうが割安です。わざわざ高い値段出して、五人乗り、六人乗り買わんでも、十人乗りのバスがあるんだから、そのほうが値段が安いんですよ。そうじゃなくて、ほんとうは見たとたんに乗りたいなと思う心を起こさせることが問題なんです。

 皆さんどうですか。みんな乗りたいだろうと、私は思っております。まずお客さんに売るまえに、自分が乗ってしまいたいんじゃないですか。あれでまあ、彼女を連れてけば、もてること疑いなしという車でございます。(拍手)

(後略)


080413_1962sports360w_500 (クリックで拡大表示)
ホンダ会に出展されたSports360(注:この画像はモノクロ写真に適当に色を着けたものです)


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ということで、まずはスポーツ360の輸出の件ですが、上掲のように本田社長がスポーツ360を輸出したいと考えていたことは明らかですね。
ただ、やはり360ccの軽自動車を輸出することは現実的ではないと考えたのでしょう。
本田社長はホンダ会の直後に、スポーツ360の排気量アップを開発部隊に指示しています。
スポーツ360の排気量アップ版であるスポーツ500が、ホンダ会の約5ヵ月後に開催された第9回全日本自動車ショーに出展されたことは周知の通り。
ショーに出展されたスポーツ500の排気量とボディサイズを拡大した2世代目のスポーツ500は、第9回全日本自動車ショーの半年後(ホンダ会の11ヵ月後)にアメリカに送られて各種テストが行われています。
これらの経緯を勘案すると、本田社長にとって輸出の話はシャレでも冗談でもなく“最初から本気だった”と考えるのが妥当でしょうね。
さすが本田宗一郎さん、考えることもやることもさすがにビッグです。

T360の、ダイナモの尻から吸気をする変わった仕掛けですが、これは本田社長が説明しているように、車体前方から新鮮な空気を取り込むためのものでした。
何故、態々車体の前方から空気を取り入れたかというと、当時の日本の道路は舗装率が低く道路事情が劣悪だったため、車体のほぼ中央床下にエンジンを搭載していたT360では、エンジンの近くから吸気を行なうと前輪が巻き上げた砂塵を吸い込むことになって、エンジンの磨耗が早く進んでしまい、耐久性に難が出てしまうためです。
それでなくても“ホンダのエンジンは高回転型だから減りが早い”と他社からいわれのない難癖をつけられていた訳ですから、そういうネガは絶対に出したくなかったのでしょうね。
それで砂塵の吸い込みを回避するため、フロントグリルから入ってきたきれいな空気をラジエターの直後にあるダイナモで吸い込んで、それをそのままオイルバスエアクリーナーに送り込む、という凝った仕掛けをT360では採用したと考えられます。
湿式と乾式を組み合わせた二重濾過式にしたのも、おそらく同様の理由からでしょう。
スポーツ360や500では、エンジンが前車軸の近くにあり前輪から離れた位置から吸気を行なえたため、T360のような仕掛けは不要だったのだと思います。

それと、本田社長が“特許出願中”と仰っているので、特許庁のHPでその特許を閲覧できないかと思い探してみたのですが、流石に46年も前のものについては公開されていませんでした。
特許庁に直接出向けば、古いものでも閲覧できるのでしょうかね。
見てみたいなぁ…。

尚、この稿で使用した「フライング 資材版 No.12」は、BOND様より提供して頂きました。
貴重 且つ、かなりの高額で取り引きされている資料を、快くご提供下さったBOND様に、この場を借りてお礼を述べさせて頂きます。
ありがとうございました。

 

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コメント

以前に、S360の記事で特徴を調べた記事がありましたがギヤのシフトパターン5Fのがありますよね!その5Fの本体が写っている画像などありませんか?見てみたいのですが・・・・

投稿: KNR | 2008年6月11日 (水) 午後 08時00分

>KNRさん
コメントありがとうございます。
お尋ねの件ですが、シフトノブとミッション本体のどちらをご覧なりたいのかがよく分からなかったので、とりあえず両方の画像をアップしました!
(シフトノブの画像)
http://ckun.at.infoseek.co.jp/S360_Shift-Knob.JPG
(ミッションの画像)
http://ckun.at.infoseek.co.jp/S360_Engine.jpg
http://ckun.at.infoseek.co.jp/S360_Chassis.jpg

これでお役に立ちますでしょうか。^^;

投稿: mizma_g@管理人 | 2008年6月11日 (水) 午後 08時47分

早速、画像を送っていただき有難うございました。写真のギヤボックスは5Fですか?ケースの長さが4F位の長さに感じるのですが?当時の資料を沢山お持ちの三妻さんの資料の中に5Fギヤボックスについて何か資料は残されておりませんですか!

投稿: KNR | 2008年6月12日 (木) 午前 07時03分

>KNRさん

>ケースの長さが4F位の長さに感じるのですが?
おっ、鋭い指摘ですね!
この件は、のち程エントリーを立てて解説しますので、少々お待ち下さい。

投稿: mizma_g@管理人 | 2008年6月12日 (木) 午後 06時13分

宜しく!当時、5Fが有ったとするとシンクロ式の5Fなんですかね?

投稿: KNR | 2008年6月12日 (木) 午後 06時35分

>KNRさん
エントリーをアップしましたので、ご確認下さい。happy01

投稿: mizma_g@管理人 | 2008年6月12日 (木) 午後 09時12分

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