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2008年2月26日 (火)

'63年型S500が存在しない理由と'63年型T360の有無

○ホンダS360やT360/S500の試作車について研究・考察している「三妻自工 Web site」はこちらです。
○Web site that researches and considers the concept model of HONDA S360 and T360/S500 is
here.

(08/02/29)本エントリーの末尾に追記しました

ホンダ初の市販乗用車となった「ホンダ S500」が発売されたのは1963年10月のことでした。
もっと正確にいうと、第10回全日本自動車ショー(S38.10/26~11/10)への出展をもってS500は市販開始となりました。
ただ、車輌が実際に市場に出回るようになったのは、年が明けた1964年からだったようですが、生産は1963年中に始まっており、Old-timer誌95号の「どこにいるS360」という記事に拠れば、S500の各月の生産台数は…
07月 12台
08月 20台
09月 23台
10月 22台
11月 50台
12月 13台
…となっています。(但し、この生産記録には量産試作車も含まれています)
 
このように、S500の生産が'63年に始まっていたことは疑いようのない事実です。
であるならば、'63年型のS500が存在したと考えるのは至極当然のことでしょう。
しかし、実際に法律上“'63年型”と定義されるS500はこの世に存在しません。
 
それは何故かというと、当時日本には「年式打刻制度」というものがあり、車輌に製造年を打刻することが義務付けられていて、その打刻する製造年の起算日が“前年の9月21日”になっていたためです。
もう少し分りやすく説明すると、例えば'63年型となるのは「'63年の前年(='62年)の9月21日から'63年の9月20日までに登録された車輌」なのです。

先に述べたようにS500が市販されたのは'63年10月ですから、'63年中に製造された個体が登録されたのは全て10月以降となり、市販型S500は全て'64年型となる訳です。
故に“'63年型のS500は存在しない”ということになるのです。
 
そうは云っても、S500の試作車はもっと早い時期にナンバーを付けて走っていたんじゃないの?と指摘される方がおられるかもしれませんので、もう少し突っ込んだ説明もしておきましょう。
 
まず、自動車を登録するには車台番号が必要になりますね。
では、S500の車台番号打刻開始日は具体的にいつだったのでしょうか?
S500の市販開始は10月ですが(S500の発売日は'64年2月1日だったことが判明したので訂正します)、上述のように当然 生産はそれ以前に始まっており、車台番号の打刻も発売日以前に始まっていました。
S500の車台番号打刻開始日は、『ホンダS500 特徴・諸元』という資料に記載されてるので確認してみると“昭和38年('63年)9月19日”になっています。
080226_s500 (Click image for full size.)
 
'64年型の起算日である'63年9月21日より前から打刻が始まっていますが、工場から出荷されて実際に登録するまでには数日掛かりますから、事実上'63年型として登録するのは不可能だったと考えるのが妥当でしょう。
またそれを見越してか、車台番号も「AS280-64-10001」となっており、ホンダ自身が'64年型と明示しています。
ということで、やはり'63年型S500は存在し得ないのです。
 
車台番号を付与されなかった試作車がどのような扱いになったかは、残念ながら資料がないので分かりませんが、未登録車であったことを勘案すると、法律で定義された**年式車とはならなかったと考えられるのではないでしょうか。
尚、この「年式打刻制度」は、'64年7月をもって廃止されています。
 

1963年といえば、もう1台ホンダから四輪車が発売されましたね。
そう、云わずと知れたホンダ初の市販四輪車「ホンダ T360」です。
T360の市販開始は'63年8月でしたから、こちらは'63年型が存在しても時系列的に全く不都合はないのですが…。
Old-timer誌90号に掲載された、福島で発掘されたT360の試作車(T360の1号車と云われている車輌)の車台番号は「AK250-64-30001」になっています。(OT誌にはAK250-64-30007と記載されていますが、後に30001であったことが判明しています)
車台番号に“64”が打刻されているということは、この車輌は'63年9月21日以降に登録(当時の軽自動車は届出でしょうか?)されることを想定して車台番号が打刻されたはずです。
ちなみに“30001”の頭の3は、製造年(西暦)の1の位を表しています。
もうひとつちなみに、5桁の数字の頭が3ではなく1の車台番号もあったようです。
31をどのような理由で使い分けていたかは分りません…。
080226_ak2506410008 (Click image for full size.)
 
本題に戻りましょう。
ということは、T360は“8月に発売されたものの9月末までは販売店にデリバリーされなかった”ということなのでしょうか?
それとも、「AK250-63-30***」という車台番号を打刻された'63年型の車輌が存在したのでしょうか?
この謎は、おそらく『ホンダT360 特徴・諸元』を見れば解けると思うのですが、残念ながら手元にありません。
 
もしこのブログをご覧になった方で『ホンダT360 特徴・諸元』をお持ちの方がいらっしゃいましたら、T360の車台番号打刻開始年月日始番号をご教示頂けないでしょうか。
手前勝手なお願いで恐縮ですが、是非よろしくお願い致します。<(_ _)>
080226_ (Click image for full size.)

その後、『ホンダT360 特徴・諸元』の現物をお借りすることが出来、このエントリーを書いた時点では不明だったいくつかのことが判明しました。
  詳しくは、新たに書いたエントリー「'63年型(三八式)T360の有無」に纏めましたので、当該エントリーを是非ご一読下さいますようお願い致します。
   


08/02/29追記
車台番号が1番(AS280-64-10001)のS500が市販1号車だと誤解されては困るので、少々補足しておきます。
“別冊CG ホンダ・スポーツ”によれば、市場に流通したS500前期型の車台番号は「AS280-64-30036」から始まって「AS280-64-10630」で終わっているそうです。
つまり、量産初号機の車台番号は「AS280-64-10001」ではなかったのです。
後期型は「64-400001」から「64-400688」までで、また「AS280-1000001」から「AS280-1000035」までのものもあったらしく、合計すると1353台になります。
しかしながら、当時の登録月報等を調べると、S500は'64年2月に200台前後、同3月に250台前後が登録されたのみで、実際の生産台数は500台程度だったのではないか、と“別冊CG ホンダ・スポーツ”では推察しています。
08/05/26追記:「別冊CG ホンダ・スポーツ」の推察を覆す資料を発見しました。詳しくは こちらのエントリーをご覧下さい。

福島に現存しているS5試作車の車台番号は「AS280-64-10004」ですから、上記資料に照らし合わせると前期型に該当しそうですが、実際は違ったと思われます。
なぜなら、福島車は市販モデルのデリバリーが始まる以前の'63年に登録されていたからです。
そもそも車輌自体も研究所製で、浜松製作所で生産された量産モデルとは一線を画すものですから、前期型に該当しないのは至極当然のことでしょう。
それで、この福島車のように'63年に登録された例もあったわけですから、S500の登録台数は“別冊CG ホンダ・スポーツ”が推察した数字より、もう少し多かったのではないか?
というのが私の考えです。

それと、これは試作車に限ったことだと思いますが、車台番号の若い車輌が必ずしも製作時期が古かった訳ではなかったようです。
というのも、福島車が研究所で製作された時、他に4台の試作車が同時に製作されたのですが、このうちの左ハンドルの2台は車台番号の打刻が始まる以前にアメリカに送られています。
となると、国内に残ったのは福島車を含めて3台。
製作時期の古い順に車台番号を打刻していれば、この3台に10001~10003の番号が付与されたはずですが、福島車には10004番が打刻されています。
ということは、福島車よりも新しい車輌に10001~10003のどれかが打刻されていたことになります。
斯様に、試作車の場合は製作時期に関わらず車台番号が打刻されていたことは間違いありませんから、若い数字=古い車輌という図式は成り立たないと考えられるのです。

以上のことはT360にも当てはまり、現存している「AK250-64-30001」号車は市販1号車ではないですし(Old-timer誌90号で試作車であることが詳述されていますね)、車台番号を根拠に量産モデルの初期型に分類することもできません。
確証はありませんが、T360の試作車の場合もおそらくS500と同様に、車台番号の数字の多寡と製作時期の新旧は必ずしもリンクしていなかったのではないでしょうか。


 

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