« S500のプロトタイプの生産開始時期 | トップページ | 三妻自工 Web site更新情報 (07/11) »

2007年7月 3日 (火)

スポーツ500(S500のプロトタイプ)の種類について

前回のエントリーで、生意気にもティーザー広告の真似事をしましたが、あまり勿体つけると顰蹙を買いそうなので、早めに正解を発表しようと思います。
  
アメリカテスト車やカタログ掲載右ハンドル車が作られた場所は・・・・・ホンダの研究開発部門である技術研究所です。
技術研究所で作られたスポーツ500(S500の試作車)の記録が、「浜松工場の生産実績台帳のコピー」にないのは至極当然のことですね。
要するに、スポーツ500には技術研究所製のものと、浜松製作所製のものがあった訳です。
これはスポーツ360も同様で、’62年に製作されたスポーツ360(TAS260/AS250)は全て技術研究所製で、’63年に製作されたスポーツ360(2X-AS250)は全て浜松製作所製でした。
  
さて、三妻自工 Web siteを隈無く読んで下さった方はご存知かと思いますが、私はS500のプロトタイプであるスポーツ500を「第9回全日本自動車ショー出展車」「スポーツ360改スポーツ500」「正規拡大版スポーツ500」の3つに分類しています。(実は、厳密に分けるともう一種類ありそうなのですが、まだ不明な部分が多いので現時点では3種類にしておきます)
詳しくは当該ページを読んで頂くとして、アメリカテスト車やカタログ掲載右ハンドル車は、この中の「スポーツ360改スポーツ500」に該当すると考えています。
’63年7月以降、浜松製作所で作られたスポーツ500は「正規拡大版スポーツ500」です。
 
アメリカテスト車やカタログ掲載右ハンドル車を、スポーツ360の改造版と考える理由はサイトに書いた通り。

…と、これで終わりではあまりにも説得力が無さ過ぎるので、「スポーツ360改スポーツ500」と「第9回全日本自動車ショー出展車」、「正規拡大版スポーツ500」の類似点や相違点から、アメリカテスト車やカタログ掲載右ハンドル車がスポーツ360の改造版であることを説明してみようと思います。
  
 
まずは、エンジンルームから見てみましょう。
070703_as250_s360
                            (クリックで拡大表示)
6/28のエントリーに参考資料として掲載した『技研に於ける4輪開発の経過』を読むと、第9回全日本自動車ショーに出展された最初期スポーツ500のエンジンは、スポーツ360のエンジンをギリギリ一杯まで拡大したものだったことが判ります。
その最初期スポーツ500の排気量は、500ccを僅かに欠ける492ccでした。
一方、車体サイズと排気量が拡大されたスポーツ500の排気量は、500ccを大きく越える531ccでした。
ということは、S500量試車のエンジンは新たに設計し直された可能性が高そうです。
実際に、「第9回全日本自動車ショー出展車(スポーツ360)」と「スポーツ360改スポーツ500」のエンジンルームを比較すると、かなり違っていることが判ります。(↑)

エアクリーナーの形状、プラグカバーの有無、ラジエターの位置、キャブレターのタイプ、ブリザーチューブの処理の仕方やエンジンオイル給油口の位置など、相違点を挙げたら枚挙に暇がありませんが、よく見ると僅かながら類似点もあります。
そのひとつは、サーモケースの向きです。(①:車体前方側に外れるようになっている)
もう一つは、ディストリビューターにバキューム進角用のアクチュエータが付いていること(②)。
この二点は、スポーツ360の設計の名残と考えられます。

今度は「スポーツ360改スポーツ500」と「正規拡大版スポーツ500」のエンジンルームを比較してみましょう。
070703_s360_s500
                              (クリックで拡大表示)
画像の「正規拡大版スポーツ500」は、’63年7月20に行われた「価格当て抽せん会」の会場に展示された車輌で、多数作られた「正規拡大版スポーツ500」の中でも最も初期の個体と考えられます。
「正規拡大版スポーツ500」のサーモケースは、ご覧のように市販モデルと同形状になっていました。(①)
「スポーツ360改スポーツ500」と「正規拡大版スポーツ500」では、サーモケースの違いからラジエター・アッパータンクの造りも異なっています。
また、「正規拡大版スポーツ500」のデスビには、アクチュエータが付いていませんでした。(②)
相違点は他にもあります。まず、燃料ポンプの位置が違います。(③) 
オイルバスエアクリーナーの形状も全く違いますね。(④:但し、複数作られた「スポーツ360改スポーツ500」の中には「正規拡大版スポーツ500」と同形状のオイルバスエアクリーナーが取り付けられた個体もあったようです)
一番特徴的なのは、プラグカバーの蝶ネジの位置だと思います。
「スポーツ360改スポーツ500」の向かって左側の蝶ネジは、縦横のプレスラインが交差する位置に取り付けられていました。(⑤)
この位置に蝶ネジがあるのは、後にも先にもこの「スポーツ360改スポーツ500」だけだと思われます。
以上は、外から見て判る相違点で、外から見えない部分にもたくさんの相違点があったと思われます。

今度は車体の外観を比較してみましょう。
070703_as250621101
                (クリックで拡大表示)
070703_s500
                (クリックで拡大表示)
070703_s5006307
                (クリックで拡大表示)
上から「スポーツ360(’62年型AS250)」、「スポーツ360改スポーツ500(アメリカテスト車)」、「正規拡大版スポーツ500(価格当て抽せん会展示車)」です。(※「スポーツ360」と「正規拡大版スポーツ500」の画像は、アメリカテスト車と車体の向きを揃えるため左右を反転させています。)
「スポーツ360」と「スポーツ360改スポーツ500」の類似点は、ボンネットにスリットが無いことと、放射状にスリットが入ったホイールキャップが付いていることです。
この2つの類似点が、スポーツ360の名残であることは言わずもがなですね。
ところで、「スポーツ360改スポーツ500」には、どうしてスポーツ360と同じ形状のホイールキャップが取り付けられていたのでしょうか?
理由は簡単です。
「スポーツ360改スポーツ500」は、ホイールキャップを含めた足廻りの部品全てをスポーツ360から流用していたためです。
それが証拠に、現存している「スポーツ360改スポーツ500」のチェーンケースは、市販モデルのそれよりも華奢な造り(ケースの厚みが薄く、リブが浅い)になっています。

「スポーツ360改スポーツ500」と「正規拡大版スポーツ500」の外観を比較すると、ボンネットのスリットの有無とホイールキャップの形状の違いが相違点になっています。
「スポーツ360改スポーツ500」は、車体のサイズこそ「正規拡大版スポーツ500」と同じになっていましたが、ご覧のようにディテールにはまだスポーツ360の名残が残っていたのです。

斯様に、「スポーツ360改スポーツ500」が「正規拡大版スポーツ500」と基本的に同仕様でありながら、スポーツ360の名残を残す過渡的な設計の試作車であったのは、「スポーツ360改スポーツ500」がスポーツ360をベースに作られていたからに他なりません。
「スポーツ360改スポーツ500」は、技術研究所に於いてスポーツ360をベースに作られた試作車であったために、浜松製作所で製作された「正規拡大版スポーツ500」とは細部の造りが異なっていたのです。

うーん・・・長々と書いてきましたが、こんなんでは残念ながら「アメリカテスト車やカタログ掲載右ハンドル車」がスポーツ360の改造版であることの実証にはならないですね。
僅かな差異を根拠にするのは、ちと無理がありそうです。
ただ、技術研究所で作られた「アメリカテスト車やカタログ掲載右ハンドル車」が、浜松製作所で作られた「正規拡大版スポーツ500」とは、だいぶ趣の違う試作車であったことはご理解頂けたんじゃないかと思います。
スポーツ500(S500の試作車)には「技術研究所製」と「浜松製作所製」があった。
せめて、このことだけでも覚えておいて頂けたらと思います。

S360の生存説のことは、「Honda Sports500(ホンダ S500のプロトタイプ)の種類と各型の特徴」に書いてあります。
興味がある方はどうぞ。 
「広い意味でのスポーツ360は現存している」、というのが私の主張でございます。

|

« S500のプロトタイプの生産開始時期 | トップページ | 三妻自工 Web site更新情報 (07/11) »

Honda Sports360 (俗称 S360)」カテゴリの記事

Honda Sports500/S500」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/158972/7020183

この記事へのトラックバック一覧です: スポーツ500(S500のプロトタイプ)の種類について:

« S500のプロトタイプの生産開始時期 | トップページ | 三妻自工 Web site更新情報 (07/11) »